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看護師みぞさんのブログ

ロボット支援下前立腺全摘出術~RALP~

 
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泌尿器科領域に携わる機会に恵まれ、そこで泌尿器科の手術の面白さにどっぷりとハマり約5年程手術室勤務を経験(うち3年程は取り仕切る形で勤務)。 経尿道的手術~腹腔鏡手術、開腹手術まで泌尿器科域の手術は行う病院でしたので、経験しました。 今年(2019年)から放射線科専属でCT・MRIを安全に検査が行えるように、マネジメント能力を発揮することを期待され勤務しています。

泌尿器科疾患の代名詞といえる前立腺癌
高齢男性(60歳以上)に多い疾患ですが、若年性(40~50歳代)に発症する方もいらっしゃいます。

今回は前立腺癌の治療法のうち、手術療法についてお話していきたいと思います。

RALPのメリットは良好な視野で手術を行うことができることと、支援機器を使用することで手術の精度を高めることができることが最大のメリットであると思います。

前立腺癌?

まずは前立腺癌について。男性にしかない臓器である「前立腺」に悪性腫瘍が生じた状態を「前立腺癌」と言います。
検診などでのPSA検査の認知が上昇したことにより、60歳以上を対象に採血PSA(PA)を測定することが増えました。そこで初めて病気(の疑い)の存在を知る方がほとんどであると思います。

PSA: prostate specific antigen:前立腺特異抗原
正常値:~4ng/mL

「PSA高値=前立腺癌」ではないということをしっかりとまずはご理解ください。 PSAについては健常者であっても測定されますし、4を越えている方も一定数いらっしゃいます。そのため異常値が出てすぐ前立腺癌とはならないのです。
あくまで指標ですので、そこからMRI検査や前立腺生検(組織検査)を経て確定診断となります。

グリーソンスコア(GS)


グリーソンスコア:前立腺細胞の悪性度を示す、 前立腺がん特有の組織異型度分類 です。
組織検査により採取した組織細胞を顕微鏡にて観察し、面積の大きな組織像と次に面積の大きな組織像によって決められます。
GS3から組織異常となり、GS5が一番悪性度が高いとなります。

例)
GS3+4などと病理結果に記載されているとします
この場合、GS3が一番面積が多く、次に多いのがGS4ということになります

以上のような経過を経て手術適応と判断され術前検査を更に経て、手術へと向かいます。

麻酔

全身麻酔

各施設により、麻酔科・執刀医の意向というものが加わると思いますので、 全てこの通りではないかと思いますが、全身麻酔のみで行うことがほとんどです。しかし、腹部手術既往があるなど腹腔内の癒着など開腹手術へ移行の可能性が高い症例では硬膜外麻酔を併用する場合があります。

局所麻酔

これもまた施設により異なりますが、術後疼痛緩和を目的としてポート作成位置にアナペインなどを皮下注射する場合があります。

ポート作成(トロッカー挿入)

一般的なトロッカー位置は上の画像のように作成します。

カメラポート作成

この操作は腹腔鏡下手術の一般的操作に順次ますのでお分かりの方は流し読みしていただいて構いません。

まず臍もしくは臍上に内視鏡を挿入する為のカメラポートを作成します。
この際に 注意すべきことは、腸管が腹壁に癒着していたりして腹腔内に到達した際に腸管を傷つけてしまわないようにすることです。

カメラポートを作成することが出来たら、気腹を開始します
十分腹腔内に空間が出来たら、腹腔内の観察を行います。
執刀前にトロッカー作成位置をマーキングしているので、腹腔内の観察と合わせて作成位置の状況を観察します。軽度の癒着であれば腹腔鏡下に剥離を行い安全な空間を作成します。
もし、ここで剥離困難な癒着であれば開腹への移行となり得ます。

気腹
腹腔鏡下手術において必要不可欠なものであり、腹腔内に炭酸ガスを注入し気腹圧8~12mmHgで手術に必要な視野を確保する。
生体への影響を考慮して通常15mmHg以上にはしない

その他トロッカー挿入

トロッカー作成のマーキングを目安に気腹した腹壁の状況(膨らみ具合)で距離(ダヴィンチのアームが干渉しないように)を調整して作成する

ポート位置の画像とリンクしやすくなるように画像を逆さまにしてあります。
手術が進行していくとダヴィンチと患者さまが接続される状況になります。
(ロールイン、ドッキング)

ロールイン

執刀時は砕石位を取り、ポート作成を行います。
ポート作成後にペイシェントカートを動かし、作成したポートと接続する操作を行います。これをロールインといいます。

ロールイン時の注意点

  • PCの支柱部分と下肢が接触しないか
  • 不潔にするものが周りにないか
  • カメラポートと支柱の中心があっているか

といったところに注意して、医師・看護師・技師が協力して運用します。

コンソール

ロールインし、セッティングがすべて済むといよいよコンソールを使用しての手術に移行です。

コンソールにて開始時のポジションです。いわゆるゼロポジションです。
これにより、鉗子を取り出しで再装着してもこの位置でセッティングされるようになります。

バンチング

静脈叢の処理のために束ねる操作を行います。
看護師からは開腹では見えていなかったところです。

バンチングを終えたら、膀胱頸部を切開し、バルーンを引き出します。

バルーンを腹側へ引き上げて固定します。
これにより直腸側の処理を安全に行うことができます。

精嚢・精管の処理を行います。

ヘモロックを使用して処理

シーリングデバイスを使用する場合もあります

前立腺を全周的に剥離して、尿道部分のみまで進めます。

DVC処理
血管の処理を行うので、気腹を15mmHgへ上げます。

DVC処理
切離した血管を縫合します。
開腹ではこの間に出血します。
気腹下で行うことでにじむ程度で手術を進められます。
止血確認できたら、気腹圧は12mmHgへ戻します。

DVC処理後、尿道切離し前立腺が離断されました。

止血処理を行っていきます。

膀胱尿道縫合
膀胱を引き寄せるように少しずつ縫合糸で寄せ合わせます。
無理に引き寄せると組織に張力がかかり過ぎ切れます。
緩いと腹腔内に尿が漏れ出てしまうため、縫合後リークテストで確認します。

組織回収後、骨盤腔内へドレーンを挿入してコンソール終了。

ロールアウト

ロールインの逆ですね。
接続を外し、安全にPCを後退します。

ロールインの際の注意点はロールアウトの際の注意点にもなります。
終盤ですので、ここで事故のないように確認してから行います。

ロールアウトでPCが患者から安全に離れたら、頭低位を解除します。

閉創~手術終了~覚醒へ

トロッカー抜去時には内視鏡で観察しながら抜去します。
気腹圧の影響で腸管が押し出されてきてしまう可能性があり、腸管損傷の危険性がありますので、最後まで気は抜けません。

閉創は各医療機関の行い方に順次ます。

合併症

尿失禁(腹圧性尿失禁)

括約筋の損傷により、尿失禁のリスクはあります。従来の開腹手術時よりはリスク低減できています。しかし、前立腺肥大症を併発している症例や腫瘍部位によっては括約筋への損傷をさけきれない場合もあるため、一定数の尿失禁は現在でも起こりうるといえます。

勃起不全

通常手術では、勃起神経も含めて摘出しますので、必然的に勃起機能はなくなります。しかし、ガンの場所や進行度によっては神経温存を行うことが可能な症例があります。あくまでも可能性を残すことが出来るということであって、神経を温存したから100%勃起するというわけではありません。
その点については十分に説明・納得された上で行うようにします。

出血

腹腔鏡下に手術を行うこと、コンソールを使用して3Dかつ綺麗な視野で手術を行うことが可能なので、出血リスクは大幅に軽減され100ml出血量としてあるかないかという程度です。
開腹に移行した場合は従来の出血となり得ますから、輸血同意書の取得は必須といえます。

腸管・尿管損傷

腸管癒着していれば剥離を必要とします、無理に力を加えれば損傷のリスクを伴います。また内視鏡で見えていない範囲で腸管を圧迫してしまう可能性もあるため、腸管損傷のリスクは手術中伴うことになります。

損傷した場合、損傷部の縫合・修復を行い、程度に応じて絶食やIVH(TPN)の留置を必要とします。

皮下気腫

トロッカー作成部位や手術進行にかけて、気腹が腹壁から皮下に溜まることで皮下気腫を形成します。主に、腹部~鼠径部にかけて、程度が強くなると、側胸部や大腿部にまで広がりをみる場合があります。
基本的には吸収されますので、様子観察にて経過をみることが多いです。

術中の管理としては、ETCO2が上昇することがあります。その場合に術野が許せば気腹圧を下げて安全に手術を進めることを声掛けすることも重要な看護であると思います。

発赤・褥瘡

頭低位に対しての体位固定で体圧分散ができていないと、頭部(頭頂部)や肩、臀部などに発赤を来す場合があります。
シュミレーションやトレーニングで手技を統一するなどの工夫が必要です。また医師、麻酔科を含めて体位作成に協力して行うことが重要です。

その他に上肢の位置調整も重要になります。PCのアームが当たる場合があります。PCの動きを把握し、体形や肢位を調整することも忘れないことです。ロールインしてテスト操作の際に圧迫する部位がないか再度確認してください。

低体温

砕石位で股間にはPCが入るため、保温のケアが十分にできない場合もあります。上半身はウォーマーで温められても下肢がいきとどかないなど。

看護師としては苦悩する部分かもしれません。
保温剤などを工夫して使用したり、各施設で創意工夫がなされていると思います。

まとめ

RALPについての事項をまとめてみましたが、いかがだったでしょうか?
前立腺摘出術へロボット支援機器の適応が拡大して、メジャーな手技になりつつある術式ですので、泌尿器科のある施設では今後関わることが増えると考えられます。

さまざまな資料が増えてきているので、目にすることも増えましたがその取っ掛かりとして活用していただければとおもいます

この記事を書いている人 - WRITER -
泌尿器科領域に携わる機会に恵まれ、そこで泌尿器科の手術の面白さにどっぷりとハマり約5年程手術室勤務を経験(うち3年程は取り仕切る形で勤務)。 経尿道的手術~腹腔鏡手術、開腹手術まで泌尿器科域の手術は行う病院でしたので、経験しました。 今年(2019年)から放射線科専属でCT・MRIを安全に検査が行えるように、マネジメント能力を発揮することを期待され勤務しています。


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Comment

  1. 中嶋 より:

    RALPの手術経過がよくわかり、ありがたかったです。
    世間がこんな状況ですので、
    看護学実習の代替えの教材として
    こちらのサイトを使用させていただいてよろしいでしょうか?
    申し訳ありませんがよろしくご回答お願いします。

    • mizo3 より:

      ありがたいお言葉ありがとうございます!
      至らないものもありますが、参考いただけたならよかったです。
      活用していただければ幸いです。

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