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看護師みぞさんのブログ

骨盤臓器脱ってどんな病気?~POP~

2019/03/01
 
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泌尿器科領域に携わる機会に恵まれ、そこで泌尿器科の手術の面白さにどっぷりとハマり約5年程手術室勤務を経験(うち3年程は取り仕切る形で勤務)。 経尿道的手術~腹腔鏡手術、開腹手術まで泌尿器科域の手術は行う病院でしたので、経験しました。 今年(2019年)から放射線科専属でCT・MRIを安全に検査が行えるように、マネジメント能力を発揮することを期待され勤務しています。

みなさん、骨盤臓器脱という言葉を聞いたことがありますか?
婦人科の方、婦人科にかかっている方はご存知かもしれません、この病名。
女性特有の症状・病態でして、古くからあったと思うのですが、あまりメジャーでなかったために見過ごされてきた可能性の高い病気でもあります。

骨盤臓器脱とは

骨盤の中の臓器を支えている組織が弱くなり膣の壁を通して押し出されてくる状態を骨盤臓器脱といいます。
安静時(通常時)でも症状がある方もいらっしゃいますが、腹圧がかかることでさらに症状が強く出現(強く押し出される)する場合もあります。

こんな症状があれば骨盤臓器脱かもしれない
・股の間に何かはさまった感じがする
・下に引っ張られるような気がする
・膣のところにピンポン玉のような丸いものが触れる
・椅子に座るときなどに、膣のあたりで何か押し込まれるような違和感がある
・残便感がありスッキリしない、トイレにいってもすぐにいきたくなる
・膣の入り口がこすれて痛く、出血する
・尿もれがあったが、最近もれが減ってきた。しかし、出しづらくなった

骨盤臓器脱の原因

骨盤底の構造

肛門や膣、尿道が貫通し開口する骨盤低は、骨ではなく筋肉や靭帯、結合組織が何層にも重なって形成されています。
立った状態で生活する人間は体内臓器のすべての過重がかかることになります。
さらに加齢などによる萎縮や妊娠・分娩による損傷、腹圧などで支えられなくなり、開口部の1つである膣から外方へ臓器が脱出してしまう。これを骨盤臓器脱というのです。

妊娠・出産による影響

1 筋肉や靭帯への直接的障害

妊娠経過により次第によって支給が骨盤内にある腸を押しのけ、膀胱を圧迫し、10ヵ月もの間骨盤底に負荷を与えながら、出産のときには約3,000gの赤ちゃんが骨盤底を通って出てきます。
妊娠中には通常の何倍ものホルモンが分泌され、産道を形作っている筋肉群や結合織は分娩にそなえてゆるんできます。出産時には直径だいたい9.2㎝の頭や肩が産道を通りますが、難産になると時間がかかり、骨盤底筋が傷つく場合もあります。
分娩が終わると3ヵ月程かけて徐々に元に戻りますが、傷ついた筋肉が修復された後は、元より弱い構造となってしまいます。

2 神経障害

分娩時に神経が障害されると骨盤底を構成する筋肉や筋膜、靭帯の強度がなくなり、ゆるんでいきます。骨盤内神経の代表的な陰部神経の損傷で支持力を失った骨盤底組織に、加齢や腹圧などの骨盤臓器脱のほかの要因が加わり、骨盤臓器脱がさらに進みます

肥満による影響

内臓脂肪は骨盤臓器脱の大敵です。
日本人の体脂肪率は、30歳以上の女性の基準値は20~27%、肥満の方で30%以上です。  体脂肪率が30%以上で体重が55kgの方では11~15kg、70kgの方では約21kgもの内臓脂肪があります。  
これを視覚化すると、日々骨盤底にお米10kgの袋1~2袋分の負荷がかかっていることになります。

職業による影響

これまでの内容を踏まえると想像できるかもしれませんが、掃除、給食、漁業、農家、介護職といった職業の方に多く見られる傾向があります。掃除や給食の仕事で大きな容器を運んだり、漁業や農家で魚や野菜の入った大きな箱を持ち上げる動きを想像するに、日常的に腹圧がかかっていると思われます。

生活習慣による影響

骨盤底に腹圧がかかる生活習慣で最大のものが便秘と言えます。
便秘に悩む女性は約4割、その半数が20~30歳代と占めていますが、便秘に悩んでいるにも関わらず改善への努力がされていないようです。
ひどい便秘で、30分以上トイレで苦しんでいる方も珍しくないようです。若いころから便秘の生活習慣をもつ女性は、長い年月にわたり骨盤底組織に負荷をかけており、骨盤臓器脱の予備軍となっていることは間違いないといえます。

骨盤臓器脱の種類

1 子宮脱

子宮が膣を通って下がってくる状態を指します。骨盤底組織に支えられている筒状の膣壁が支持力を失い、膣壁に連続する子宮が下垂し、膣口から脱出するのが子宮脱です。
下垂が進むにつれて膣口から完全に脱出し、膣にはさまった違和感やこすれて出血するようになります。

2 膀胱瘤

子宮の前方にある膀胱が膣壁を押して下がってくる状態を指します。下垂の程度により、排尿時の症状が違います。
膀胱瘤の初期には尿道を支える構造がゆるみ、咳やくしゃみ、腹圧がかかったときに尿がもれる「腹圧性尿失禁」が起こることがあります。さらに膀胱瘤が進み、尿道より下方に膀胱が下がってくると尿道と膀胱の角度が変わり、尿もれがなくなり逆に尿が出しにくい症状が出てきます。
また、尿が常に膀胱内にたまり残尿が多くなるため膀胱炎を起こしたり、頻尿や切迫性尿失禁の症状がでる場合もあります。

3 直腸瘤

直腸が膣壁を押して脱出してくる状態を指します。
肛門直上の直腸は膣側に膨らんだポケット状のスペースが出てくるため、ここに便がたまり、常に便意を感じます。ポケットにたまった弁はいきんでも出なく、腹圧をかければますます直腸瘤が進む悪循環へ。

4 膣断端脱

手術にて子宮を摘出したにもかかわらず、膣から丸いものが出てくる状態。
骨盤底を支える構造がゆるむため、子宮のない袋状の膣管は裏返しになり、骨盤内の臓器を入れた袋となり膣口から脱出します。

治療方法

保存的治療法

初期の状態であれば、骨盤底筋体操で進行を抑えることが可能です。
 ペッサリーリング   :異物であるため、膣内に挿入することで、必ず膣壁に炎症が起こります。おりものが増え、膣壁の炎症が続けばびらんが生じます。また膣壁にはまり込んでしまうことがあり、そうなると切断して取り出す必要があります。
  フェミクッション:サポート下着   はガードル型の下着にシリコン製の楕円形のクッションを装着し脱出しないように臓器を支える構造になっています。自分で脱出した臓器を戻すことができることが条件になりますが、適切な使用により、QOLは改善し、骨盤臓器脱の進行を遅らせることも可能です。

手術療法(根治的治療)

様々な手術療法がありますが、現在標準的に行われている術式に絞っていきます。

1 TVM:メッシュを用いた骨盤臓器脱手術

ポリフォーム メッシュ(カット例)

メッシュシートを病態にあった形状に切り出し使用します。
経膣的アプローチとなり、基本的に臓器を摘出しない手術方法のため、身体への負担が少ない術式です。


体位:砕石位(お産や内診の姿勢)
   足は高く上げるので、術後に大腿部痛(筋肉痛症状)を訴える場合もある

・問題点
   手術の精度により術後成績に大きく影響します。  
 つまり、どの手術でもそうですが、患者側が正しい情報を正確に取り入れ、施設や医師を取捨選択しなくてはならないのです。メディアの情報もそうですが、自分自身でしっかりと確認した情報を総合して選んでほしいほ切に願います。

2 LSC:腹腔鏡下仙骨膣固定術

LSC(腹腔内よりメッシュにて固定後)

腹腔鏡手術で行われます。加えて、術野確保のために頭を低くした姿勢(頭低位)をとり手術を行うため、脳血管疾患・眼科疾患・循環器疾患によっては耐術能がないと判断され、LSC手術選択に至らない場合もあります。その他のリスク要因として、肥満があります。術前よりダイエットを指導されることになるかと思いますが、先にも述べたように脂肪により負荷がかかるためその軽減と手術時の腹腔内環境の改善(内臓脂肪の減少)及び、術後も体形維持することで良好な環境を維持して治療効果を継続する要因にもなり得ます。

メリット
  メッシュをしっかりかけ、固定することができるため治療効果が高い
退院後の日常生活への早期復帰 

デメリット
  手術時間が長い(TVMと比較し約2~3倍)
術者による差が非常に大きい(時間にも関与)
既往歴により術式を選択できない。及び、術式変更の可能性がある  

3 膣閉鎖術

膣閉鎖術

TVM、LSCが選択困難で根治的手術を希望される方へ行われる術式です。
膣を閉じて臓器脱が起きないようにする方法です。
術後に性交渉が困難となるため、性生活のある方はできません。また、患者自身のボディーイメージの了解も必要です。後で戻すということが困難であるために、インフォームドコンセントもそうですが、看護師のかかわりも重要となるのではないでしょうか。


おわりに

今回は骨盤臓器脱についての基本的な内容になります。
最近になり取り上げられてきている話題だけに、女性の方は知られている情報もあるかもしれません。しかし、正しい情報を正しく理解することは非常に難しいことだと思います。
僕自身、看護師であり、この疾患に関わることがあって知識・技術を深めることができていますので。様々な分野でそれぞれに特化した方が書いたものをうまく使って、吸収していただければと思います。

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